羽毛ふとんってどんな特徴があるの?
ウールって何がすごいの?
化学繊維だって進化しているのに、あえてそれらを使う理由ってなに?

たしかに化学繊維の進化は目覚ましく、高機能のものがたくさんあります。
しかし金澤屋では「本当に心地よく眠るために」必要な素材として、天然素材のすばらしさをもっと上手に活用し、生活に取り入れてもらいたいと思っています。

 

保温性と通気性

まずは羽毛ふとんの原料である「羽毛」。
アヒルやガチョウなどの「水鳥」の毛です。
水鳥の毛ですから湿気や水分を含んでしまっては、体が重くなり体温調節も難しくなってとっても不都合です。そのためもともとの羽毛自体は水をはじきやすく、おふとんにしても汗や湿気を吸う力はあまりありません。つまりはとても蒸れやすい素材といえます。
そして驚くほど細かな毛足(羽枝-うし-)がたっぷりの空気の層を作り出し、少量でも高い断熱性を持つため、「軽くてあたたかい」というおふとんにとって最高の素材ともいえます。

しかしいくら保温性に優れていても、湿度をコントロールできなければ結果的に体温調節は難しくなります。

そこで大事になってくるのが「側生地」「充填量」です。
側生地の素材や糸の細さ、織り方や染色などで通気性や重さ、肌触り、耐久性などは格段に変わってきます。
また充填量も最近の気候や住環境の変化を考えて、あえて軽めに仕立てることでより長い期間使っていただける、など様々な工夫があります。

金澤屋の羽毛ふとんには「蒸れる」ものをいかに「蒸れない」ように使うか、いろいろな工夫が詰まっています。

 

ウール(獣毛)は哺乳動物がその身を守るために皮膚を進化させた繊維です。原料になる羊やキャメル(ラクダ)、アルパカ、カシミヤ・・・はどれも乾燥地帯や寒暖差が大きい、など厳しい気候に生息しています(羊は家畜化されているため一概にはいえません)。
そんな厳しい環境で生きる生物にとって大切なのは、暑くても寒くても「体温を一定に保つこと」です。
獣毛には毛の表面のキューティクル状の構造(スケール)で、湿度をコントロールする機能があります。このとき羊毛内に留められた水分は厳密には液体をしており、発散するときには気体になるためいわゆる「気化熱」として体表面の熱も一緒に下げる効果があります。

保温についてもこの湿度コントロールの機能が深くかかわります。水蒸気などの水分が固体に触れる際、運動エネルギーが熱エネルギーに替わって生まれる熱を「湿潤熱」といいます。この仕組みで皮膚から発散される水分が毛に触れることで熱を生み、さらにこの熱を逃がさないよう独特の縮れ(クリンプ)による空気の層が断熱材となり、しっかりと保温をします。
また素晴らしいのはこれらの機能は獣毛の物理的構造で成り立っており、その動物の体を離れて毛だけでもしっかりと作用する点です。

暑くも寒くもないちょうどよい温度と湿度を保つウールは我々人類の進化にどれほどの恩恵をもたらしたかは計り知れません。

 

年々希少になる天然素材

1880年代にヨーロッパで化学繊維が初めて誕生して以来、さまざまな機能を持つ化学繊維(合成繊維)が登場し、盛んに用いられるようになりました。
しかしいまだそれらの化学繊維も及ばない高機能性をもつ羽毛やウール(獣毛)は、残念ながらさまざまな要因から生産量は減り、逆に需要は高まっています。
とくに羽毛は鳥インフルエンザの流行や飼育数の減少により生産量は著しく低下している一方、ファストファッションのダウン製品の人気もあり、需要と供給のバランスが崩れ、価格は高騰する一方です。

天然素材の魅力は、持って生まれた独自の機能性と、なんといっても肌に触れて気持ちがいいことにあります。
羽毛やウールは人間が作ろうと思っても作れない、自然の恵みそのものです。
これから先、天然素材の価値はますます上がっていくことでしょう。

金澤屋では「本当に心地よく眠るため」に、どうしても必要なこれらの天然素材をできるだけお求めやすくお届けできるよう、仕入れの時期や量を工夫したり、製作コストを見直したりと、努力を重ねています。